第一話

「なかなか、良い出来ではないか。これは期待できそうだな」

ゼラはハンガーに収められた機体を満足げな表情を浮かべながら眺めていた。

目の前にたたずむのは、ナクシャトラの技術の粋を結集させて作り上げられた新型機。

次の作戦目標地点であるロンシャ深山にて、極秘裏に試験投入されることになった。

赤を基調とした機体に大鎌を振るわせて敵を狩る姿は、まさに死神を想起させるものである。


「あら、楽しそうね。私にもよく見せてちょうだい」

カツカツと小気味よくヒールを鳴らしながらその女は現れた。

突然の来訪者に少々苛立ちを覚えながらもその姿を見た途端、ゼラは目を見開いた。

「!!……お前は、まさか……」

その様子を知ってか知らずか、女は含みを持たせた笑みを浮かべながら言葉を続けた。

「あら、なかなかカッコいいじゃない」

女は獲物を品定めするが如く機体の頭部から脚部の先まで眺めていた。

「でも……残念、その機体は私がいただくわ。あなたにとっては過ぎたオモチャじゃなくて?」

「なっ、貴様……ッ!!」

そう言い返そうとした刹那、凛としたその眼光にゼラは身じろぎもできなかった。

「貴様……いったい何者だ」

「そうね、あえて言うならば……いえ、想像にお任せするわ」

獲物を射抜くような眼光と毅然とした風格――

その出立ちはまさにすべてを総べるもの――女王――という言葉がふさわしい。

誰かがそう命じたわけでもなく本能的にゼラは悟ったのであった。


「それじゃあ、私の出番がきたら呼んでちょうだい。楽しみにしているわ。
もっとも……それまで母艦(ここ)が耐えられたら、の話になるでしょうけど」

そう言って女は妖艶にほほ笑みながら、闇へ溶けるように去っていくのであった。


「くっ……」

徐々に静寂へと溶け込むヒールの音を聞きながら、ゼラは苦悶の表情を浮かべた。

「なぜ奴がここに……」

  • 第二話


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