「今回は私とエーカムが行きましょう」
先のロンシャ深山における作戦で、新型機は申し分ない機体性能を発揮した。
この報告を受けて、試験投入が一定の成果を得たと判断したエイジェン幹部会
「ナヴァ・グラハ」は次の指令を下す 。
ゲルベルク要塞跡を奪掠せよ――。
ブリーフィングルームから出るジーナの傍らにはアドリシュタがいた。
「やっと出番のようだね。さて、今回はどれだけの花が散ってくれるのかな?」
アドリシュタは今回の作戦を待っていたとばかりに期待を膨らませていた。
「あら、面白そうな話ね。私も混ぜてちょうだい」
頬に手を当て、悩ましげな笑みを浮かべながら女は現れた。
まるで二人を待ち構えていたかのように……
突如、現れた女にジーナは眉をひそめた。先の作戦で真紅の悪魔を自在に操る
この女を一言で表すならば、そう
――魔女
「それにしても、あの子たち、なかなか楽しませてくれるじゃない。
また少し遊んでもらおうかしら」
「……この作戦においての指揮権限は私にあります。少しは発言を……」
分をわきまえない無礼者……これが一般の強化機兵ならそう言っただろう。
そう言いだせないもどかしさを感じながらジーナは密かに唇を噛み締める。
女はアドリシュタを一瞥し、どこか蔑むような節で言葉を紡ぐ。
「あら、少なくともそこにいる小さなレディよりは役に立つと思うけども」
「そう……ではご勝手に。出番になったら呼びましょう」
「ふふふ……期待しているわ。でも、それまで壊れないようにね」
その一言がジーナの逆鱗に触れたのは言うまでもない。
平穏を装いながらも、ジーナの目は烈火のごとき怒りを宿していた。
ジーナと女の間には、まるで見えない火花が散っているかのようだった。
「今回は待機とします。次の作戦までに調整を怠らないように」
ジーナは振り向きもせずに部下にそう告げて去って行った。
アドリシュタは上官が去った後、ひとり呟いた。
「まったく……女というものは怖いねぇ」