第4話

「城塞都市バレリオより入電!正体不明の機体を操る強化機兵が出現!」

ロンシャ深山とゲルベルク要塞跡の2度にわたる襲撃の影響が収まらない中、バレリオの地をエイジェンの多脚巨大兵器が蹂躙する。

Z.t.シリーズと思わしき風貌を持つその機体は死神のごとく大鎌を携えてるという。

フィオナは凛とした声でコンソール越しにいる男性ボーダーに今回の作戦の要綱を伝えた。

「それが……どうも今までとは違うようなんです」

「いつもと違うって?」

怪訝に思う男性ボーダーを横目にフィオナは続ける。

今までのケースなら特別な強化機兵が再度襲撃することはあっても、ある程度時間をおいてからということが多かった。

しかし、これほどまでに短期間で同一の個体が出撃することは今までなく、マグメルの本部としても異例の事態で初期対応に後れを取っていた。

しかも、今回現れたのは今まで登場してきたアドリシュタとイフリットといった特別な強化機兵とは違う個体だという。


「前回の襲撃で傍受した通信記録によると……その強化機兵がゼラやジーナといったエース級に指図するといった記録も残されているそうなんです」

エイジェンが従える強化機兵は戦場における指揮官であるエース級に何かを進言したりすることは基本的にない。

そうした行動をとるということは今回確認されたのは既存の強化機兵よりも上位の存在という可能性が高いという事だった。


フィオナは傍受に成功した通信記録の一部を再生した。


「あら、あっちの方が楽しそうね。少し失礼させてもらうわ」

「おい、貴様そっちではないと言っているだろう!」


「この戦場の指揮官は私です。勝手な行動は慎みなさい」

「向こうの方が敵が少なかったのよ。せっかく気遣ってあげたのにつれないわね」

「……!」


「……奴らの中にも上下関係があるってことなのか?」

「詳しくはわかりませんが……おそらくそうなのかもしれません」


正体不明の機体とそれを操る正体不明の強化機兵。

フィオナはこれまでとは違った得体の知れない「特別感」を危惧していた。


「ま、どんな相手だろうといつも通りやるまでだ。

それに……今回はアレがあるしな。どうにかなるさ」

ヤマシリーズの新型機「ヤマ・天」

マグメルではエイジェンの強化機兵が搭乗する機体データを徹底的に解析し、対抗しうる力を持つ機体を模索していた。

ヤマ・天もそのひとつであった。幾度にわたるマグメルでの試験運用を経て、今回の作戦を持って傭兵たちの使用が正式に認可されたのであった。

「せっかくあるものなんだし、ちゃんと使わないとな」

男性ボーダーはニッと笑いながら通信を切り、戦場へと赴いた。


「どうか、ご武運を」

様々な憶測が頭の中で巡りつつも、今やるべきことはただ一つ。

目の前のボーダーが無事に帰還できるようにサポートをすること。

通信越しの敵の「声」に胸騒ぎを感じながらも、そう固く誓うフィオナであった。

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